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脊柱管狭窄症とは何か?
脊柱管とは、脊髄(せきずい)や神経が通るトンネル状の空間のこと。この脊柱管が加齢や変性により狭くなり、神経が圧迫されることで、腰痛や下肢のしびれ・痛み、歩行障害などが現れます。
主な症状:歩くとつらく、休むと楽になる
脊柱管狭窄症の特徴的な症状に「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」があります。これは、一定距離を歩くと足がしびれたり痛んだりして歩けなくなり、少し前かがみになって休むとまた歩けるようになるというものです。これは神経が圧迫されることで血流が悪化し、神経の働きが低下するためです。
その他の症状としては、次のようなものが挙げられます
症状の例
- 足のしびれ、脱力感
- お尻や太もも、ふくらはぎにかけての痛み
- 腰痛(座っていると楽になる傾向)
- 足の冷感や違和感
原因とメカニズム
加齢に伴い、背骨の構造は次第に変化します。椎間板の変性や骨の変形、靭帯の肥厚などによって脊柱管が狭くなり、内部を通る神経が圧迫されます。とくに腰部(腰椎)のL4〜L5のあたりに好発します。
以下は代表的な原因です:
・椎間板の膨隆(ついかんばん)
・黄色靭帯の肥厚(じんたいのひこう)
・骨棘(こつきょく:骨のトゲ)の形成
・腰椎のすべり症(骨同士がずれる)
これらの変化が複合的に重なることで、脊柱管内のスペースが狭くなり、神経根や馬尾神経(ばびしんけい)を圧迫するのです。
診断の進め方
症状の自覚に加え、医療機関では以下のような検査が行われます。
・問診と身体診察:歩行距離や姿勢変化による症状の変化を確認。
・MRI:神経の圧迫状態を明確に把握。
・X線:骨の変形やすべり症の確認。
・CTスキャン:より精密に骨構造を把握。
これらを組み合わせて、脊柱管の狭窄具合や神経の圧迫部位を特定します。
治療法:保存療法と手術療法
保存療法(まずはこれから)
- 薬物療法:消炎鎮痛薬、神経痛薬(プレガバリンなど)
- 理学療法:リハビリ・ストレッチ・筋力トレーニング
- ブロック注射:神経の炎症を抑える
- 装具療法:腰椎ベルトなどで姿勢を補正
軽度〜中等度の症状の場合、多くは保存療法で改善が見込まれます。
手術療法(保存療法で改善しない場合)
- 除圧術:圧迫部分の骨や靭帯を取り除く
- 固定術:骨のズレが大きい場合に、金属などで固定
高齢でも症状が重ければ手術が選択されることがあります。手術成績は良好な例も多く、日常生活の質(QOL)が大きく改善するケースも見られます。
日常生活での注意点
無理な動作を避ける
前かがみになると楽になるとはいえ、長時間の中腰や重いものを持つ動作はNG。腰に大きな負担がかかります。
ウォーキングの工夫
背筋を伸ばした姿勢では痛みやしびれが出やすいので、杖やシルバーカーなどの補助具を使いながら、軽く前傾姿勢で歩くとよいでしょう。
栄養と体重管理
骨や神経の健康を保つためには、カルシウムやビタミンDを意識した食事も重要。体重増加は腰への負担となるため、肥満予防も心がけましょう。
よくある誤解
「歳だから仕方ない」と症状を放置する人が少なくありません。しかし、脊柱管狭窄症は進行性の疾患であり、適切な治療で十分に改善する可能性があります。逆に放置すると、歩行困難や排尿障害など、日常生活に大きな支障をきたす恐れも。